読書記録4 『天才の栄光と挫折』
はじめに
大人になって数学に興味をもったのはその不思議さや自然科学の再発見もありますが、数学者たちの人物像がとても面白かったのも理由の一つです。
学校の教科書では定理の一つとして、解法のテクニックの一つとして無機質に勉強するだけです。しかし、その一つ一つの発見の裏には数学者たちの人生や個性があって、そのときの時代背景や学者の確執など血の通ったドラマがあります。
私は数学者たちのドラマを知ることで、それまで冷たく感じた定理や式に興味をもつことができました。
天才の栄光と挫折
歴史に名を残す数学者たちの足跡を著者がたどるようにエッセイ風に書かれているのが「天才の栄光と挫折」です。
新潮社と文藝春秋から文庫が出版されているようですね。
新潮社より引用
ニュートン、関孝和、ガロワ、ハミルトン、コワレフスカヤ、ラマヌジャン、チューリング、ワイル、ワイルズ。いずれおとらず、天才という呼称をほしいままにした九人の数学者たち。が、選ばれし者ゆえの栄光が輝かしくあればあるほど、凡人の何倍もの深さの孤独や失意に、彼らは苦悶していたのではなかったか。同業ならではの深い理解で綴る錚々たる列伝。
天才であるのは間違いないのですが、必ずしも皆が器用な生き方をできたわけではなく様々なドラマがありました。時に不器用な様子は先日ブログに載せた「博士の愛した数式」の博士に通じるところもあります。そんな背景を知った上で教科書を改めてみると、また違う楽しみが発見できるかもしれません。
肉親の愛に飢えていたニュートン、日本にて独自の数学を築いた関孝和、ドイツの暗号エニグマを解くことに成功したものの不遇な最後を迎えるチューリングなど魅力のある人物ドラマばかり。
知的な刺激を受けること間違いありません。
「博士の愛した数式」の著者小川洋子さんとの対談エッセイもあわせて挙げておきます。